医療現場で問題となっていることの1つに「燃え尽き症候群(バーンアウト・シンドローム)」というものがあります。一定の目標に対して献身的な努力を続けてきた人が、周りから期待したような評価を得られなかった場合などに感じる徒労感や無力感のことです。この状態で更に絶え間なく慢性的なストレスを感じ続けると、何事に対しても意欲を感じなくなり、社会生活もままならなくなってしまいます。

看護師の場合、もともと責任感が強く、献身的に看護を行おうと考えている人が多いため、劣悪な環境の下で激務を続けていると、知らず知らずのうちにストレスが蓄積して燃え尽き症候群を発症し易いと言えます。例えば、次の看護師もその1人です。

大学病院勤務 M.U.さん(25)の場合

看護師の仕事を始めて3年目ですが、半年前に救急外来へ移りました。以前の病棟では、患者さんと日々会話をしながら、元気になって退院していくのを励みにがんばっていましたが、今の職場では、忙しく走り回っているだけです。

それに、運ばれてくる患者さんにもその家族にも見えているのは医師だけで、看護師の姿はどこにもないような気がします。そう感じるとむなしくて、何もやる気がなくなってしまいました。今では、勤務先に足を踏み入れるのでさえ勇気がいります。やらなければいけないことはわかっているのに体が動きません。どうしたらよいのでしょうか?

この看護師のように、献身的な看護が報われないと感じて燃え尽き症候群を発症する例は多く見られます。他にも、懸命に仕事に打ち込んでいる様子を周りから否定されたり、それに見合った評価がされなかったりすることで発症する場合もあります。これらは一見違った原因によるものと思えますが、どれも自分ががんばっただけの正当な評価や反応がないということから発症していると考えられます。

燃え尽き症候群の症状を改善するためには、まず心身共に休めることが必要です。忙しすぎて、追いつめられるように仕事をしている場合は、できる限りまとめて休みを取るようにしましょう。もしそれが現実的に難しいようなら、せめて休みの日は気分転換を図りゆったりと過ごすように心掛けたいものです。

また、家族や友人に話して心の中にたまった物を吐き出してしまうと言うことも大切なことです。愚痴を言うのをためらう人もいるでしょうが、心の中にため込んで余裕が無くなってしまうのが最もよくないことなのです。

本来なら、燃え尽き症候群から抜け出すためには、本人が心の持ち様を変えるのが一番です。しかし、「がんばりすぎるな」と言われてもがんばってしまうという性格はなかなかすぐには変えられないものです。ですから、看護の仕事自体がいやになっているわけでなければ、正しく評価してもらえるような場に配置転換してもらったり、転職したりすることが有効だと言えます。

実際に「燃え尽きた」人たちは、それだけ献身的に看護をしてきたのです。その場から抜け出して強さを身に付けたら、今度はそのがんばりをきちんと活かし、評価してもらえる現場で仕事をするべきでしょう。