患者に対して「看護師に何を望みますか?」と質問をしたら、おそらく多くの人が「優しさ」と答えるでしょう。では、看護に必要なものは優しさだけなのでしょうか?

実は、次のような質問を投げかけてきた看護師がいました。

公立病院勤務 N.Y.さん(28)の場合

最近、入ってきた看護師の中に、注射を失敗しても笑ってごまかしたり、優しい口調の割にいい加減な説明しかできなかったりする人がいて困っているんです。それで、フォローに回るのが毎日大変なので師長に訴えたんですが、「看護の基本は優しさだからね」などと言われてはぐらかされたんです。しかも、実際に迷惑を被っているはずの患者さんも「あの人は優しいから許す」なんて言うんです。

逆に、比較されるせいか、患者さんに治療上ダメなことをダメとはっきり注意すると、「あんたは優しくないねえ」などと言われるので納得がいきません。看護って優しさが絶対なんですか?

同じ様な疑問を感じている看護師は他にもいるでしょう。でも、ここで考えなければいけないのは、患者の求めている優しさは、上の例のような甘さのことなのかと言うことです。もちろん、答はNO.です。では、看護師に求められる優しさとはどのようなものなのでしょうか?

それは、優しい笑顔、細やかな心配り、穏やかな口調だけでなく、安心感を与えられるだけの知識と正確な技術も合わせた総合的なものでしょう。見た目や言葉だけが優しそうでも、後に不安を残すようでは、本当の意味の優しさにはなりませんし、知識や技術だけがあっても、それを説明する口調や態度がきつかったり、機械的だったりしては患者に苦痛を与えてしまうからです。つまり、看護の上で必要な優しさは人間性と強さを兼ね備えたものであって、甘さや弱さでできた優しさはかえって看護の上では邪魔になってしまうのです。

他人を思いやる気持ちが優しさだとしたら、看護をする上で優しさは必須であると言えます。しかし、患者の求めに応じるだけが優しさではありません。時にはダメなことをダメと言えることも優しさです。

ただし、同じ内容のことを伝えるにも心に相手を思いやる気持ちがなければ、受け取る側の気持ちも違ってきます。ですから、優しさは看護師の中身、つまり知識や技術を活かすためにも必要なものなのです。その意味において、看護に優しさは必要ですが、絶対的なものではないと言うこともできるでしょう。